これって、後ノリ?

盲信する「後ノリ」ドラマー


バンドのリハーサルが終わった飲み屋で、ベースのSくんから、「今日のこの曲のタメ、良かったっすねー」と言われた。
僕のドラムは、フロアタムをハイハットのかわりに叩くパターンがとても多い。重たいビートを生もうといつも意識していて、8ビートなら2拍4拍のスネアをグッとタメて打っているのは事実である。いわゆる「後ノリ」というやつだ。

なので、Sくんからそう言われたとき、ああわかってくれてるんだなと素直に喜んだ。そんなこともあって、その後も重たい音を出したい一心で後ノリドラムを心がけていた。フロアタムを多用する曲はもちろん、普通の8ビート、速めの16ビートも全て重く、重く。

半年ほど経って、バンドの数曲をレコーディングしようということになった。もちろん全てがセルフレコーディングだ。
まずはドラムのみ一発録りからだ。普段のバンド練習では使わないので、ヘッドフォンでクリックを聴きながらの演奏は苦手である…。
クリックに合わせるのに四苦八苦しながらなんとか録り終えて、あー終わったとホッと一息ついたところで、録り終えた音をチェックしていたギターのTくんが、ちょっと申し訳なさそうに顔を上げて言った。
「もう1テイクいきます?」


後ノリ神話の崩壊


「もういっかい…?」
いつも演っている得意な曲だった。録り終えた時にはある程度の自信と満足感があった。
もう一回やり直すなんて!と心で毒づきながら「いや、いい、いい。これがベストテイクだよ」と僕は答えていた。

そして翌日、レコーディングしたテイクを聴いた。

違う。なにか、自分の叩いてる時のリズムのイメージと、録音したリズムのそれがまったく違うのだ。録ったリズムはなんというか、スピード感がない。もっさりしている。

クリック音を入れてよく聴いてみた。ハッキリと分かった。
明らかにスネアが遅れている!

シンプルなバスドラ4つ打ちの8ビートでは、2拍・4拍でスネアとバスドラが同時に鳴るはずなのだが・・ズレて2音に聴こえたのだ。バスドラが先行して、いや、スネアが遅れて、「ド・タ!」と鳴る。なんでもないリズムなのに、こんなはずじゃない、という気持ちだった。
フィルインやキメの部分は、聴いててほんとに気持ちが悪い・・。「後ノリ」で「重い」などと勝手に思い込んでいたものが、こんなにバラバラにズレたひどいリズムだったとは・・。

後ノリとは、アタックを遅らせることではない


ギターのTくんがドラムの録り直しを勧めたのは、このためだった。Tくん含め、バンドのメンバーはずっとこの違和感を持っていたに違いない。

ドラムのノリは、叩くタイミングを前後させることで生まれるものではない。大大大前提は、やはりジャストタイミングのはずだ。

今まで僕がやっていたことは、後ノリではなかったのだ。

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