アルミホイール【AMGスタイリング6】のガリ傷を2,000円で修理

「ガリ傷」と「白サビ」


愛車のアルミホイールを買い換えたのはかれこれ10年以上前のことだ。

このホイール、見た目はスポーティでなかなかカッコいい。ただ、低偏平率のルックスと使い勝手はトレードオフで、いくら気をつけていてもちょっとした縁石で「ガリッ」とやってしまうのは仕方がないことである。

買った当初は、相当慎重になって臆病な運転をしていた。でも、喉元過ぎれば…という感じで、何年か経過するうちに当初の慎重さはどこかに行ってしまい、気がつけばホイールはガリ傷だらけ、となってしまっていた。


あらためて見てみると、かなりのダメージがある。遠目で見てもかなり目立つ。

ひどいのは、リム外周部の「ガリ傷」だ。特に、左フロント。キズのギザギザは、深さ1.5〜2mmはあるだろうか。何度となく縁石などを引っかけたり、こすったりしてしまったのだろう。
ガリ傷には、黒い油脂を含んだタールのような、固まったブレーキダストのような汚れが食い込んでいる。

また、「白サビ」と言われる腐食が、リムに限らずいたるところに蔓延しているのであった。

白サビ発生のメカニズム


悩ましいのは、この「白サビ」だ。
アルミ(合金ですが)は錆びにくい材質だが、さりとて金属、置かれた環境により劣化は進む。

一般に、乾燥した空気中では、アルミの表面は、酸化アルミニウムのごく薄い膜で覆われているそうで、この薄い層が内部への腐食の進行を食い止めているらしい。「白サビ」はその酸化膜の上に発生して、鉄のサビのようにどんどん内部に進行することはないようだが、見た目にも気持ちのいいものではない。

アルミホイールの金属面には、表面の保護のため、硬いクリア塗料が塗装されている。このクリア層は非常に硬いので、比較的小さな物理的衝撃によるキズを防いでくれる。また、外気や水を遮断して酸化を防ぎ、加水による劣化を食い止めている。

ところが、キズがついてクリア層が剥がれ、アルミの金属面が露わになると、その場所が入り口となり、外気と水分がクリア層とアルミの間に入り込んでいって、ジワジワとアルミを劣化させていく。白く濁った線がミミズのように広がっているのは、水分などがクリア層の下に地下茎を張るように染み込んでいった跡だ。
このような白サビがホイールの中央部にも多く見られるが、これは、中央付近でも何らかの原因でクリア層が剥がれているのだろう。

さて、これらホイール修理をプロの修理業者にお願いすると、1本何万円もの出費になってしまうことは明白だ。何とか自分だけの力で修理できるなら、トライしたい。しかも出来るだけ安上がりに…。

総費用2,000円で修理するには


超低予算ホイール修理、揃えたものは、これだけだ。

① 平ヤスリ(長さ20センチほど。中目&油目)
②耐水ペーパー(#80、320、600、1000、2000)
③ピカール
④マスキングテープ

いくら低コストでも、最低限このくらいの準備は必要ではないかと。それでも総額2,000円ほどだろうか。すべてヨドバシドットコムで買った。
ちなみに、耐水ペーパーの#80と#2000は、作業開始後しばらくして買ったものである。

その他、ペーパーがけ用の木片とか、ウエスとかも使うのだが、四角い消しゴムとか、使い古しのTシャツとか、代用できればなんでもいい。

言い忘れたが、最後に用意するいちばん大事なものは、「根気」である。

1.ホイールを洗浄する

作業の下準備は、ホイールを洗うところからだ。ホイール&タイヤをクルマから外して、ざっと水洗いする。

本当は、ホイールとタイヤをバラした方が、ホイールの隅々まで作業できていいのだが、一般家庭には道具はないし、スタンドなんかに頼めばお金がかかるので、このままで作業した。
いやめんどくさいからタイヤをクルマにつけたままやるよ、という方もいらっしゃるかもしれないが、あとあと余計めんどくさくなるので、クルマから外すのが得策だ。

一応、ホイールの裏側もブラシでゴシゴシと洗い、あと、センターキャップも外しておく。樹脂製のものなので簡単に外せた。

洗い終わったら、水をしっかり拭き取る。のちにマスキングする際に濡れているとテープがくっつかない。

2.マスキングする


リムの内側、スポークの側面など、削らない部分を、マスキングテープで保護する。

はじめは平たいヤスリで削るので、あまり貼り方に神経質になる必要はない。僕は面倒だったので、あり合わせのガムテープで適当にやってしまった。

3.平ヤスリで削る

ツボサン製の平ヤスリで、ガリ傷のいちばん目立つリムの外周から削り始める。

最初、削るのはやっぱりかなりの勇気が必要である。
ここでためらう必要はない。もう後戻りはできないのだ。自分を信じて粛々と作業を進める。

水をかけながら、ヤスリの目詰まりがないように、平面を意識しながら荒削りしていく。使った平ヤスリは、表側が「中目」、裏側が仕上げ用の「油目」だが、中目のみで荒く仕上げていけばよい。


スポーク部分の白サビも削る。

ここで気づいたのは、表面のクリア層がものすごく硬く、削りにくいということ。

エッジ部分はヤスリと当たる面積が小さいので楽なのだが、平面部はヤスリの歯が滑ってしまうくらい硬い。滑るとヤスリがあらぬ方向にスッと逸れていくので養生はちゃんとしといた方がいい。僕は写真のように雑すぎたので、多数のもらいキズを作ってしまった。

ホイール中心部の曲面の凹凸も手こずったところだ。曲面では平らなヤスリは面で当てられず、ヤスリの先端で引っかいていくしかなかった。

硬いクリアを剥がす手段として、はがし剤などのケミカルを使うことも考えた。しかし、このホイールは奥行き部とスポークの内側にチタニウムグレー塗装がされており、ケミカルを使ったら当然クリアとともに塗装も全て剥がれてしまう。再塗装できるならいいが、必要最低限のコストと手抜きが前提なので、ケミカル使用はやめておいた。

クリア層の削りカスは白くて細かい粉状のもの。この樹脂の削りカスが出ている間は、アルミの面に到達していない。クリア層がなくなってヤスリの歯がアルミに当たると、突然感触が変化する。柔らかく、ザクッ、という感じ。アルミは柔らかい金属だ。うっかりしてるとあっという間に削りすぎてしまうので注意が必要である。

このホイールの金属面には「ダイヤモンドカット」が施されていた。つまり、細かいレコードの溝のようなスジが表面に入っているのだ。これを平らにヤスってしまうので、仕上がりは平面になり、元のダイヤモンドカットの風合いは失われる。これは致し方ない。

とにかく根気よく、全体に白っぽいクリア塗料がなくなって、キラキラしたアルミの地肌が出てくるまで、ひたすらガリガリと削り続けた。

4.耐水ペーパーで磨く

❇︎ここで、あらためてしっかりとマスキングするのがいい。あとあとラクである。

平ヤスリでの荒削りができたら、耐水ペーパーの粗いものから順に磨いていく。番手#80のペーパーを使う。

小さな木片にペーパーを当てて平面を出し、水を流しながらみがく。

今後の研磨作業に共通することだが、磨くときは、磨いてるペーパーの目より大きな凸凹を残さないことが大事である。あとで細かい目で磨いてもキレイにならない。僕も最初は出来るだけ削る量を少なくしようとして、荒い凸凹を残してしまい、結局は最初の荒い目からやり直すハメになった…。

#80から始まり、ペーパーの荒さより深い凸凹がなくなったら、次に細かい番手のペーパーで磨く。根気よく、ひたすら磨く。

#600くらいになってくると、ザラザラした研磨感が、キュッキュッ、という感触に変わってきます。見た目上、だんだんと磨いたところとそうでない部分の差がなくなってくるので、注意深く観察する必要がある。細かい番手では摩擦抵抗が小さくなって、磨く時間も断然短くなり、どんどん作業が捗りラクチンだった。


これが、耐水ペーパーの#2000まで磨き終えた図。
リムの部分と、スポークの平らな部分は磨かれてアルミの地肌が出ている。もちろんダイヤモンドカットはなくなってしまった。まーこれはこれでそんなひどくもないかな、と自分を納得させる。

実は、ここまでに費やした時間は、@1時間×7日×2本分。休日の空いた時間をやりくりして充てたので、何だかんだで2か月ほどかかった。

5.ピカールで磨く

ここから仕上げに入る。使用するのは、「ピカール」


ピカールは、乳化性液状金属磨き。日本磨科工業株式会社が製造・販売している、ロングセラー。安くて手軽に使えるみんなの味方だ。

ピカール、粒度では#4000相当ということで、このタイミングで使うことにした。

使う前に、水磨きで濡れたホイールを拭いて水分を除去する。マスキングを改めて抜かりなく。

乾いたウエスにピカールを適量垂らし、磨く。かるーくで大丈夫だ。
かるーくなでていると、だんだんウエスが黒ずんでくるが、これが研磨カスだと思われる。ピカールは伸びがいいので、何度もつけたす必要はないようだ。感覚的には、最初の荒い粒子がだんだんとくずれて細かくなって馴染んでいく、そんな感じだ。

磨いていくと、アルミが金属としての輝きを取り戻したかのように「しっとりと鈍く」光り出す。


オリジナルの、ダイヤモンドカット+クリア塗装は、カットにより光を乱反射させることでどの角度から見ても鋭くキラキラしている感じ。磨いたものの光り方とは全く違う。
でも、本来のアルミニウムの無垢の質感がかなりイイと僕は思うのだが、どうだろうか。
保護のためにクリア塗装するべきだが、くすんできたらまたピカールすればいいし、この先またガリっとやったらまた削ればいいし、クリア無い方が作業簡単だし、何より無垢のアルミってカッコいいし、このままでいくことにした。

全くのど素人の自分的には、まずまずな仕上がり。2,000円でできたし。

やっとフロント2本できた。あとはリア2本か…。









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