「オープンリムショット」について考える

あれ?リム打ってないの?


こう言われたのは大学に入ったばかりの時だ。

音楽サークルでバンドを組んで、僕はドラムをやっていたのだが、僕らの演奏を聴いていた先輩のドラマーに、こう指摘されたのである。

「リムショットしないとスネアが聴こえないぞ」
「…リムショット?なんですかそれ?」


先輩は、スネアのリムとヘッドを同時に叩くとデカイ抜けた音になるんだ、と教えてくれた。ロックのドラマーはみんなやってるよ。オープンリムショットできないとな。

当時、バンドはかなりな轟音で練習していて、あとからギターのKくんに聞いたことがあるが、練習のときはいつも、ジャズコーラスのボリュームが「10」だったそうだ。
このバンドの音にスネアの音が埋もれていたのか。

自分では、それなりに大きな音が出せているという自負があったので、先輩の言葉にはかなりショックを受けた。

その日から、オープンリムショットの習得のため、躍起になって練習に打ち込んだことは言うまでもない。スコーンと抜ける、大音量のバンドの音に負けない、そんなスネアのショットを目指した。

思えばそれから何十年も、スネアに限らずタムタム、フロアタム含めすべてのタイコをオープンリムショットで叩いてきた。すべての曲で、すべてのアタックを、オープンリムショットで叩いた。たまに人から「相変わらずタイトな音だねー」などとほめられたりして、自分でも、まあそこそこはいけてるかな、と満足したり…

ドラマーとして、数年前からスランプ(?)に見舞われている僕であるが、実のところ、不調の一因はこのオープンリムショットにあるのではないかと考えている。

アタックのタイミングが遅れる


僕の場合、リキむと、遅れる。
ここ最近、脱力を意識するとアタックの遅れが解消してきたことから、リキむと遅れる、という事実は疑いようがない。

振り返ると、僕のオープンリムショットは、
1 スティックを強く握り
2 スティックがぶれないように手首を固定して
3 スティックと手首がつくる角度を90度ほどに保ち
4 そのまま腕を振り下ろし
5 力を込めてリムにスティックをアタックさせ
6 スティックがしなることによってヘッドを叩き
7 そのまま押さえつける
という一連の動作であった。

基本と正反対だ。スティックを強く握りリキむことでドラムを押さえつけているようなものである。今まで、こんな方法でドラムを叩いてこられたのは、力によって強引にリズムスピードを出していただけだ。
悲しいかな、加齢とともに筋力は低下する。最近になって、リズムを引っ張っていく力が不足して、だんだんショットの遅れが目立つようになってきたのだろう。これがスランプの原因に違いない。

もちろん、僕のやっていたことは、本来のオープンリムショットではないはずだ。我流でやっていたことを、自分で勝手に「これがオープンリムショットだ」と思い込んでいたのである。

ドラムを鳴らす

もうひとつ、間違ったオープンリムショットによって損なわれていたのは、ドラム本来の「鳴り」だ。

やってみると良くわかるが、スネアでもタムでも、リムを叩かない方が、ドラムらしい音がする。
アタック後、ヘッドの細かな振動で立ち上がってくる繊細な縦の音と、やや遅れて膨らみだす、胴によって増幅する力強い残響がよくわかる。
ボリュームの幅も広くなり、音が変わるだけで上手くなったように聞こえるのではないだろうか。

自己流オープンリムショットから脱却しなければならない。練習が必要になりそうである。


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