旧車のウインドウフィルムはがしに大苦戦

劣化の進んだウインドウフィルムをはがす

94年製のメルセデス・ベンツS124。前のオーナーはウインドウフィルムを貼っていた。
フィルムは薄めのブルーなのだが、時間が経過して相当劣化が進んでいるようで、特にテールゲートのウインドウはヨレヨレに見える。これではすこぶる視界が悪く気に入らない。
この際全部取り去ってスッキリさせたいものだ。が、なかなか手強そうだ。劣化したウインドウフィルムをはがすのは一筋縄ではいかないと聞く。業者に頼むと数万円は取られるようである。
気は乗らないが、重い腰を上げた。

まずは右側リアドアのガラスからフィルムをはがし始める。
ウインドウのカドからフィルムの端を指でつまみ出し、はがし始める。予想に反してビビビ…と、簡単にめくれていくではないか。
この日の気温は20℃くらい。ヘアドライヤーを用意していたのだが、特に温めずともフィルムはペリペリとはがれてくれる。余裕である。

あっけなくひとつのウインドウのフィルムが除去できたのだが、ここで気づいた。
ウインドウフィルムは3層でできている。一番外側は透明で丈夫なフィルム層、次に色の付いたごくごく薄いフィルム層、そしてガラスに接しているのが強力な粘着ノリの層である。
今はがしたフィルムを見ると、どうやらはがれたのは外側からの2層のフィルムだけらしい。つまり、ガラスにはまだ粘着ノリが全面に残っていたのだ。

一方、小窓の部分には、薄いフィルムの着色層が一部残ってしまっていた。


コイツが残るとなかなか厄介である。
着色フィルムは非常に薄く、ヘラを使っても端の部分が引っかからず、つまみだすことができないのだ。仮につまみ出せても、引っ張るとすぐにちぎれてしまう。
思い付いた苦肉の策、ガムテープを上から貼ってはがす方法でいくらかは取れたが、細かくちぎれたものはどうしても取り去ることができない。厄介な仕事だ。


しかし、左サイドのウインドウをはがしたとき、自分の甘さに気付いた。
さっきと同じようにノリ以外はカンタンにはがせると思いきや、ウインドウフィルムの透明な層だけがはがれて着色層がすべて残ってしまい、悲惨な状態になってしまったのだ。


この画像はガムテープで1時間格闘したあとのものだが、はじめにはがしたときは窓の面積の90%ほどに薄い着色フィルムが残ってしまっていた。
右サイドと比べ、左サイドははがしづらい。左サイドのフィルムは柔軟性を失っているようだ。なぜか。これまで保管時に左側にだけ陽が当っていて劣化の差があるのか。原因は不明だ。

効率の悪さに辟易しながら、細切れになっていくフィルムを、ひたすらペタペタとガムテープでくっつけてははがしていく。ちなみに、紙のガムテープは粘着部分がはがれてしまうので、布製のものを使うべきだったと後で気付いた…


3時間かかって、やっとここまでだ。ユーラシア大陸からフィリピン諸島くらいまでにはなった。まだまだ、ちぎれたフィルムの島々は残っている。

カミソリでノリを削り取る

もうここまでで十分ウンザリだが、これで終わったわけではない。ガラスにベッタリくっついている、強力な粘着ノリを取らなければならない。

ネットの情報で、ウインドウのノリにはパーツクリーナーが良い、とあった。パーツクリーナーは手元にあったので試してみることにした。

ノリにパーツクリーナーをシューシューと吹き付けながら、ウエスで力を入れてゴシゴシとこすり取る。相当な力でこすらないと、ノリはビクともしない。ノリはクリーナーを含んでいるときだけ粘着力を失う。その間にウエスの繊維でからめとっていくのだが、クリーナーは速乾性なので、うかうかしているとノリはすぐに粘着力を回復する。そして急いでこすりとったノリも同じく粘着力が戻るため、常にウエスのきれいな部分を使うようにしないと、ノリがガラスに再びくっついてしまい非常に効率が悪い。
それならば、と樹脂製のヘラでパーツクリーナーを吹き付けながらかき取ってみたのだが、まったくノリははがれなかった。樹脂製のヘラでは先端が丸いのか、ノリの層に食い込んでいかない。

イライラして、とうとうカッターを持ち出してきた。カッターで削る。


さすがにカッターの刃は固くて鋭い。フイルムはパリパリはがれて、ノリも一緒にかき取られる。注意すればガラスも傷つかないようだ。ガラスの硬度は鉄のそれよりも高い。
カッターよりも薄くて柔軟な刃があればいいのだが、と考えて思いついた。100均に行ってこれを買ってきた。


昔ながらの顔剃り用のカミソリである。7本入り110円だ。これは使える。
刃は薄く鋭利でしなやかなので、ガラス面によく密着する。シャカシャカと往復させると、フィルムとノリを一緒に削り取ることができる。潤滑剤として、またノリの不粘化のためパーツクリーナーを吹きながらやるとなおいいようだ。
現状、この方法がノリ落としの最適解ではなかろうか。


とはいえ手間はかかりまくり、リアゲート以外のフイルムを完全に取り去るのに、まる4日を要することになる。

最大の難所、デフォッガー熱線の入ったリアゲートウインドウ

リアゲートのウインドウにはデフォッガー(くもり取り)の熱線が走っている。
ウインドウフィルムをはがす際に、熱線も一緒にはがれて切れてしまうことがあるらしい。そんな事態は避けたいものだ。

慎重に、ゆっくりゆっくりはがしていく。


なんとかフイルムははがせた。幸い熱線は切れていないようだ。
断線が怖くてカミソリは使えない。ウエスでこすり取るしかない。ウエスでこすってノリを拭き取るときも熱線には注意する。


リアゲートウインドウだけでたっぷり2日の作業が必要であった。やっとすべてのはがし作業が完了である。
念のためリアデフォッガーを作動させてみる。


熱線は切れていないようだ。


これでS124のクリーンで視界良好なグラスエリアが復活した。費やした時間は、まる6日間…もう二度とゴメンである。








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