「ちょっと、いい傘」使ってみませんか?

日本での傘の「地位」

今年の夏は雨が多い。

雨の街を歩けば、やはり目立つのは使い捨てのビニール傘だ。雨の交差点を渡るとき、すれ違う8割の人は間違いなくビニール傘をさしている。

どこにでも売っているビニール傘。安い。急な雨に降られても、近くのコンビニに駆け込めばワンコインで買えたりする。

一方で、ビニール傘は、使い捨て大量消費の象徴にもなっている。僕はエコ活動家でもそっちの思想家でもないが、雨上がりの道路脇に壊れて放置されている傘を見ると、ちょっとなんだかなあ、と思ってしまう。

傘と言えばビニールでできた透明なやつ、安くてなんぼ、壊れてもなくしても、また買うモノ。日本では、そんな傘のイメージが定着している。

バッグだの靴だのアクセサリーだの、何かとこだわりの強いヒトでも、傘については無頓着な気がするのだ。持ち物として、こだわる必要もない、ということなのかもしれない。

スーツ姿のできるビジネスマン風の男がビニール傘をぶら下げている。有名ブランドで固めたお姉さんは、ヒールの足元を気にしながらコンビニ傘をさして歩いている。だからといって特にとがめられることはない。

イギリスの映画やドラマを観ていると、やっぱり傘をさすシーンがよく出てくる。男も女も黒い傘、というイメージだが、もちろんそこにビニール傘は見たことがない。そもそも洋傘はイギリス紳士の持っていたステッキが始まりだ、という説は本当かどうかはわからないが、傘をさすイギリス人はなぜかカッコいい。

日本で、ちゃんとした傘を持っているヒトを見かけると、「お、やるな」と思うのは僕だけであろうか。

越前の洋傘

越前では、織物工業が盛んだったこともあり、地場産業として洋傘がつくられてきたそうだ。

この傘は、職人の手作りである。かれこれ15年ほど前、たまたま入った百貨店で催事があって、見たら気に入ってしまい購入したものだ。

骨は16本。骨が多いとやや重くはなるが、堅牢でしかもシルエットが美しい。生地は一度張り替えている。

軸と石突きは木でできている。以前、石突きを道路の側溝のグレーチングにひっかけて折ってしまったことがあり、その時も修理をしてもらった。

持ち手は牛革のストラップだ。その辺に引っ掛けられないし、持ちづらくもあるのだが…

気に入ったモノをメンテしながら長く使う、というのは今の日本ではあまり重要視されていない。もともと日本人はそうではなかったはずなのに、少し残念ではある。


これからも、直しながら長く付き合っていこうと思っている。

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