ちょっと、古いメルセデス【S124】買いました

 エンスーじゃないけれど

25年ぶりにクルマを買い替えた。
93年のメルセデス・ベンツE320ステーションワゴン、S124である。


このクルマの販売情報を大手中古車販売サイトに出していたのは、横浜にある小さな板金屋だった。
見つけたのは中古車情報のサイトだったが、掲載されている車両の写真は、どれも夕方の薄暗い時間帯に撮った暗く不鮮明なものばかりで、印象はいまひとつだった。そのためかどうか、何ヶ月も売れずにどんどん値段を下げていた。

そして、値段がまた下がったので、自宅からも近いこともあり、見に行くことにした。

ショボい写真のせいで先入観があったのだが、実車を見ると案外そんなことはなく、なかなかいい感じだ。
ボディカラーについて、売出しの情報では「色:ピンクⅡ」と記載されていた。ピンクのベンツ?と謎だったのだが、実車を見るとピンクというより、ちょっとくすんだローズというか、むしろ小豆色に近い落ち着いた赤であった(正式には「アルマンダインレッド」とのこと)。
いくつかバンパーをこすった跡があった。ドアにちょっとしたへこみがあり、エアコンスイッチが取れていたり、まあそれなりのヤレはある。走行距離は12万キロほど。30年経過にしては少ないほうかも知れない。

総じて言えば、年式相応。こんなものかなあ、という僕の心情を読み取ったのか、担当のKさんが「乗ってみる?けっこういいよ」と言ってくれたので、せっかくなので試乗してみることに。

124の始まり

ドアをガチッと閉めて乗り込み、エンジンをかける。静かだ。重たいオルガンペダルを踏み込むと、長いボディは鷹揚に動き出す。2速発進なので、周りにいるどの車よりも遅い。だが、道路に出て10メートルほど進んだところで、「おお…」と声を出してしまう。
これは良い。よく分からないがとても良い。評論家のような表現はできないので、良い、としか言いようがないが、やっぱり良かった。

実は昔、80年代のW124に乗っていた。2.3リットルの4気筒は若干非力で、住宅街への上り坂ではヒイヒイ苦しんでいた。
しかし今鼻先におさまっている直6は、大きな声を上げるわけでもなくスルスルと静かに回っている。堅牢なボディの雰囲気と重量感が相まって、クルマはたっぷりのトルクでヌルリと進み、ジットリと路面に吸い付くようだ。車全体でカドというカドを消し去ろうとしているがごとく、摩擦を感じさせないように動く。
なんとも素っ気なくて粘っこくて頑固なクルマである。


試乗を終えたときには、もうこのクルマを買おうと決めていた。S124の始まりであった。

おそらく自分にとって最後になるであろうこのクルマ。ぼちぼちと気負わずに付き合っていきたいと思う。

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